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キーワードは「摩擦レス」 皮膚科医が教える、肌トラブルシューティング – Vol.3 肌荒れ・湿疹/山崎 まいこ先生
vol.3 肌荒れ・湿疹/山崎 まいこ先生〔まいこホリスティックスキンクリニック〕
これまでなかったところに吹き出ものができたり、いつもと同じ化粧品を使っているのに突然赤みが出たり……。そうした肌荒れがたびたび起こるようになったと感じている女性が増えています。どうしてなのでしょうか?「まいこホリスティックスキンクリニック」の山崎 まいこ先生にお尋ねしたところ、その原因は、意外なところにあるようです。
マスク生活で日常化した肌荒れ
―山崎先生は皮膚科医として、体の外側からだけでなく内側からのケアも含めて治療をされていらっしゃいます。そうした観点で、肌荒れや湿疹ができる原因について伺えたらと思います(※広義でいうと、ニキビやシワも肌がダメージを受けているという意味では肌荒れの一種ですが、ここではそうした症状の手前の、日常的に感じる肌の不具合についてをテーマとします)。
山崎 まいこ先生(以下 山崎先生): ひとことで肌荒れといっても症状が多岐にわたるためさまざまな要因がありますが、外的因子としては、紫外線、花粉などの大気中の物質、そして肌への摩擦や長時間の接触。マスク着用やスキンケア、メイクといった行為がこれにあたります。肌が乾燥を引き起こし、バリア機能が落ちるとそれらの要因に対して肌が過剰にリアクションして、赤みやかゆみ、吹き出物などの症状として表れるわけです。
―肌荒れや湿疹で来院される患者さんは増えていますか?
山崎先生:コロナ禍以降のマスク生活で多くなりました。これまで荒れたことがなかった方に症状が出始めたり、もともと荒れやすい人がより荒れやすくなったりしていますね。
―マスク着用がダイレクトな刺激となるわけですね。
山崎先生:マスクで苦労されている方は本当に多く、素材を変えても合わない方は合わない。マスクの形状も大事で、女性は小さいサイズを好む傾向にありますが、小さすぎると強く密着してこすれ、肌を刺激してしまいます。また、マスクの下の蒸れも問題。保湿されて肌によいように思えますが、唾液にまみれているので雑菌の宝庫です。また外したときに急激に湿度が下がり、その落差は肌表面の乾燥を招くことになります。
―乾燥も肌荒れの直接的な要因のひとつなのでしょうか。
山崎先生:そうです。肌が乾燥する原因も多々ありますが、十分でない栄養状態やホルモンバランスの乱れ、また肌内部の保湿因子が少ないなどのコンディションに加え、外的因子の刺激が強くなってくると免疫反応が起こり、その程度によっては症状が出始めます。
―栄養状態も、肌の乾燥に関わってくるのですか。
山崎先生:肌の潤いを守るために重要な役割をする保湿因子には、皮脂膜や天然保湿因子(NMF)、細胞間脂質などがあり、これらが潤沢にありバランスがとれている状態でバリア機能が保たれます。角質層の中で水分を保持する役割がある天然保湿因子は、主にタンパク質が分解されたアミノ酸を主成分とする物質。角質細胞がいい状態でないと保湿因子も産生されませんし、そのためにはしっかりとタンパク質が摂れていることが重要です。普段の食事で栄養を十分に摂れていない女性は多く、当然肌にも栄養がゆきわたりません。細胞活動のエネルギーをつくるための酸素が供給されていなかったり、不足していたりするため血流が悪くなり、結果としてさまざまな不具合を引き起こします。
―血流というと冷えを思い浮かべますが、肌荒れにも関係があるのですね。
山崎先生:肌荒れも冷えも根本の原因は同じです。肌は毛細血管に支えられているので、血流が滞ると栄養が供給されず、必要な成分が産生されなかったり、老廃物を排泄できなかったりするので、新陳代謝も悪くなり、悪循環となります。
根本的な原因は体の内側に
―さまざまなことが関連しているわけですね。患者さんに対して、どういったことから治療を始められるのでしょうか?
山崎先生:その人の肌状態や主たる原因によって異なります。具体的には、肌の外的刺激がある場合はそれを取り除く、栄養不足の場合はそれを補い、代謝を高める、といったアプローチです。肌にいいといわれるものをなんでも摂り入れたがる方もいますが、やみくもに補えばいいというものではなく、その人に適正なものを必要摂ることでゴールが近くなります。人によってはあえて摂らないこと、つまりファスティングをおすすめする場合もあります。また、睡眠もとても重要です。
―体の内側からのケアというのも大切なのですね。
山崎先生:肌荒れというのは突然起こるものではなく、慢性的な不調の表れです。体の内側に何かしらの不具合や乱れ、滞りがあり、長い期間を経てそれらが徐々に結びついて体内にさらなる不調を引き起こし、体の外側にある肌がこらえきれずに悲鳴をあげて、症状として表面化する、そうした経緯で発症します。症状となった肌表皮のトラブルを抑えるための応急処置は薬を処方することで可能です。けれど、その要因となっている根本的な部分を整えて、不調そのものが起こらないように抜本的な治療をするとなると、生活習慣そのものの見直しが必要となり、少し時間はかかります。
―「これまで使っていた化粧品が急に合わなくなった」という方もいらっしゃいますよね。その方の肌内部で知らず知らずのうちに不調が起こっていた、ということなのですね。
山崎先生:ご自身にとっては突然合わなくなったという感覚かもしれませんが、長い間その要因を抱えていて、その間は気づかなかったわけですね。クリニックにお見えになる患者さんもそのようにおっしゃる方が多いのですが、カウンセリングでそれまでの生活習慣や体調などをお聞きしていくと、赤みやかぶれなどの原因がかなり前にさかのぼって起こっていることがわかるんです。
体の声に耳を傾け、SOSを受け止める
―それが表面化する前に、自分で気づけるようなサインや予兆といったものはあるのでしょうか。
山崎先生:たとえば、今のように寒い時期、洗顔後にすぐに化粧水などをつけないとカピカピになってしまうといったように極度の乾燥を感じるなら、肌荒れ予備軍。また、明らかに睡眠不足が続いている、生理不順がある、せっかくの休日なのに遊ぶ元気がないほど疲れている、といった肌以外の症状も見逃さないでいただきたいですね。ちょっとしたことで落ち込む、ふさぎこんでしまうといったメンタルの低下も体が発するSOSのひとつです。
―日常のベーシックなことが大切なんですね。日々の生活を見直して、自分を大切に扱わなければという気になります。
山崎先生:肌は優しく触れるだけでも、コルチゾルというストレスホルモンのレベルが下がることが科学的に解明されています。日常的にストレスを感じている方は、スキンケアのときにいつもより長く、肌を慈しむようにタッチしてあげてください。毎日のスキンケアタイムを、自ら楽しんだり、リラックスしたり、自分をいたわるための時間にしてあげるということは、忙しくてもできることですから。
メイクを通して知る、自分のモード
―誰にでも今日からできることですね。メイクについてはどうでしょうか?
山崎先生:自分に手をかけて大切にするケアの時間のひとつですから、メイクも軽くでもいいのでしたほうがよいと思います。メイクをしていると自分自身をケアしているという気持ちが芽生え、自分を意識して自信をもてるようにもなり、内面からの美しさにもつながります。
―メイクアップのときに気をつけたほうがよいことはありますか。
山崎先生:スキンケア時には手で優しく触れてあげるとよいとお話ししましたが、メイクのときには摩擦などで過度な刺激を与えないように注意していただきたいです。特にブラシやパフの摩擦でくすみやシミになっている方が多いですね。クレンジングに負担がかかるようなフルメイクは毎日ではなく大切な外出のときだけにするなど、メリハリをつけて気分を変えるのもよいことです。
―先生ご自身もメイクを楽しまれていますか?
山崎先生:普段はアイメイクが中心なのですが、メイクで変わる自分を見るのも楽しいですし、そのときの気分でメイクも変わりますから、自分の状態を知ることができておもしろいなと思います。ナチュラルメイクにしたいときもあれば、しっかりと色を重ねたいときもあって、選ぶカラーからも“今日の自分はこんなモードなんだ”とわかりますよね。ですからメイクは私にとって、自分との対話でもあるんです。メイクを楽しむためにも、体の内側から、健康な肌状態をキープできるといいですね。
(※ヤーマンより依頼したコメントを編集の上掲載しています)