お口のニオイの原因と対策は?歯科医がおすすめする口臭予防のための口腔ケア
プラークをしっかり除去する正しいお口のお掃除方法とは?
「あれっ、もしかして口臭かも…?」お口のにおいは自分では気づきにくいのが厄介なところ。無自覚なままの人もいれば、過剰に気にしてしまう人もいます。
口臭というと飲酒・喫煙の習慣のある“オジサン”に多いイメージかもしれませんが、ケアを怠ると年齢や性別に関わらずにおってしまうもの。正しい対策を習慣付けて、息スッキリの毎日を送りましょう。
お話を伺ったのは…
にしかわデンタルクリニック 院長
西川 博史 先生
1979年北海道北斗市生まれ。2004年 東京歯科大学を卒業後、埼玉や茨城の歯科医院に勤務したのち、2010年3月に東京都世田谷区に『にしかわデンタルクリニック』を開院。2023年7月に日本睡眠学会歯科専門医に認定。
※ヤーマンより依頼したコメントを抜粋・編集の上掲載しています
お口のニオイの原因は、
細菌のしわざ?
※画像はイメージです
友達や同僚などと話しているとき、ふと相手から口臭がして「自分は大丈夫かな?」と気になったこと、ありませんか?
日本歯科医師会が10〜70代の男女1万人を対象とした調査※によると、自分の口臭が気になった経験のある人は全体の80.6%。他人から口臭を指摘された経験のある人の割合も全体で41.5%、女性でも37.1%にのぼることがわかりました。
※「10代〜70代の男女1万人に聞く、お口の臭い調査」公益社団法人 日本歯科医師会(2016年6月2日)より
口臭は自分では気づきにくく、また他人に指摘しにくいのも困ったところ。人間関係にも悪影響を及ぼしかねないため、きちんとケアしておきたいところです。
とはいえ、にんにくやネギを食べたわけでもないし、昨晩お酒を飲んだわけでもないのに、なんだか口の中が臭うような気がする…。そんな口臭の原因はいったい何なのでしょうか?
「胃腸が荒れていたり内臓の調子が悪い人もいますが、多くは口の中のばい菌が原因です」と語るのは、歯周病治療のスペシャリストである西川博史先生。
口臭の原因は、おもに内臓の不調によるものと口腔内の細菌によるものですが、ほとんどは後者。内臓疾患を抱えているわけでもないのに口臭がする場合は、歯や歯茎に残っているプラーク(歯垢)や舌の上に付いた舌苔(ぜったい)が要因である疑いが濃厚です。
「人の口の中には500から700種類の常在菌がいると言われており、中には正体が分かっていない菌もありますが、口臭のもとになる菌はおおよそ分かっています。それらの菌が揮発性の硫黄化合物である硫化水素とメチルメルカプタンという物質を発生させているんです」(西川先生)
においの元凶となる物質は、口腔内で悪さをする菌が、口の中の剥がれ落ちた細胞や食べかすに含まれるタンパク質をエサにして分解することで発生します。
硫化水素は卵が腐ったようなにおいで、メチルメルカプタンは玉ねぎが腐ったようなにおい。これらがプラークや舌苔に集まりやすい菌の活動で発せられ、不快な口臭となっているのです。
プラークは歯ブラシが届きにくい箇所に付着しやすく、歯並びによって付着しやすい人もいます。また、歯科矯正中の人も矯正装置の周辺にプラークが残りやすいので要注意。プラークを放置すると虫歯や歯周病へと進行してしまいます。
「歯周病は痛いと感じないので要注意。歯周病の患者さんは歯と歯茎の間に歯周ポケットができ、そこで細菌がどんどん増殖してメチルメルカプタンを発生させます。歯周病の方は来院されると入口から入った途端に口臭がわかるくらいですね」(西川先生)
市販の測定器で
セルフチェックも可能
オーラルケアを習慣化している人がまだまだ少ないと言われる日本。「日本人の30代以降の8割は歯周病の恐れがある」と西川先生は言います。
他人から指摘されるほどの口臭が治らない人や、歯磨きをしたとき歯茎から出血があるような人は歯周病の恐れがありますので、歯科医を受診してチェックするようにしましょう。
そこまでいかなくとも「なんだか口のにおいが気になる」「口を手で覆って息を吐くとにおう」という人は、舌苔がないか、プラークが付着していないかをチェック。
舌苔は目視しやすく、舌の表面に付着している白い汚れが舌苔です。そこで菌が活動して硫化水素などのにおい物質を発生させています。
口腔内が潤っていれば、舌の表面にいる菌は唾液によって流されますが、唾液の分泌量が少なくなる夜や、口呼吸などでドライマウスの状態にあると菌が増えるため、舌苔も出やすくなります。
プラークがどこに付着しているかをチェックするには、染め出し液が便利です。
「染め出し液は薬局でも売られています。これを『ぐちゅぐちゅペッ』と口でゆすぐと、プラークの残っている箇所に色が残るので、そこをしっかり歯磨きして落としましょう」(西川先生)
また、昨今では口臭を測定するハンディタイプの口臭チェッカーも数千円で入手することができます。クリニックで測定する機器ほどの精度ではありませんが、口臭の要因となる物質を呼気から検知し、段階表示してくれます。口腔ケアのモチベーションにもなるツールです。
口臭対策は、機械的にプラークを
除去するのが一番の近道
では、口臭を発生させる悪い菌を取り除くには、どのようなセルフケアをすればいいのでしょうか?
※水流によってプラークなどの汚れを落とすヤーマンの口腔洗浄器「ジェットフロス」。
細く鋭い独自の「トルネード水流」が歯間部と歯周の汚れの除去をサポート。
「口臭を予防する口腔ケアは、実は至ってシンプル。菌の集まっているプラークを落としていくことです」(西川先生)
口臭対策というと、アルコールや殺菌成分の入ったデンタルリンスなどの洗口液に頼りがちですが、口の中の菌は何層にもなって付着しているため、洗口液ですすぎうがいをしても菌を消すことはできません。
「口腔内の菌は、歯ブラシの摩擦やジェットフロスのような口腔洗浄器の水圧で機械的に落としていくしかないんですよ。ですので、まずはしっかり歯磨きでプラークを取り除くことが大切。口腔洗浄器の昨今の製品は非常によく落ちます」(西川先生)
洗口液は、あくまでプラークを落としたうえで使いましょう。しっかり歯磨きした後、洗口液の成分で菌の活動を静かにしてあげるというイメージです。
また、西川先生が口臭対策として推奨するのは、まず「歯磨き粉なし」の歯ブラシで10分ほど歯を全体的にブラッシングすること。
「テレビやスマホを見ながらでけっこうですので、10分間、隅々まで歯を磨いてみてください。すると『あれ、ここちょっとにおうな』と菌のいる箇所のにおいが分かってきます。そのにおいを自覚したところを丁寧に磨けばいいんです。その後で歯磨き粉を使ってつるつるにするといいですね」(西川先生)
《 口臭対策のための歯磨きワザ 》
- 歯磨き粉をつけずに10分、全体的にやさしく歯を磨く
- ニオイがする箇所は口臭のもととなる菌がいるので重点的に磨く
- 歯ブラシに歯磨き粉を付け、仕上げにサッと磨く
最初から歯磨き粉を使うとミントの香りで菌のいる場所に気づきませんし、発泡するため短い時間で口をすすいでしまいがち。1日1回、水だけ歯磨きのブラッシングタイムをつくると、自分でにおいをチェックしながら口臭ケアができるというわけです。
また、舌苔がよく出る人は舌クリーナーを使って除去するのが効果的。
ただし、舌はデリケートな組織ですので、舌磨きをしすぎると舌を傷めてしまう恐れがあります。舌クリーナーはシリコン製の柔らかいものがおすすめ。
1日1回以内で行うようにしましょう。
お手軽な対策として、キシリトール入りのガムは、噛むことで唾液の分泌を増やし、虫歯や口臭の原因となるミュータンス菌の増殖を抑える働きがあるのだそう。ミュータンス菌は甘いキシリトールを砂糖だと勘違いして摂取しますが、キシリトールは酸を出さないため菌は増殖することができません。
逆に止めたほうがいい悪習慣はタバコです。
「歯と歯茎の間からは、つねに少量の浸出液(唾液に似た成分)が出ていてバイ菌がたまらないように歯肉溝を清掃していますが、喫煙するとその浸出液が止まり、菌に抵抗する白血球も減少するため、歯周ポケットに菌が入り放題になってしまいます」(西川先生)
また、口腔内の菌は、夫婦や親子の間でうつりやすいため、口腔ケアは家族全員で取り組む必要があります。
「人の口の中の菌は、生まれたときには何もないのですが、両親や家族を介して子どもに移り住み、3〜4歳以降その種類は大きく変わりません。しかし、結婚後に一緒に住むようになったパートナーが歯周病菌の多い家系で育っていたとすると、相手から菌をもらい、それまでなかった虫歯が急に出てきたりすることがあるんです」(西川先生)
口腔内の菌は132度の高温でなければ滅菌できないため、コップやスプーンを清潔にしていても家族間でうつるのだそう。口腔ケアは家族みんなで意識したいですね!
定期的な歯科検診を受けて、
口のトラブルを未然に防ごう
口臭の予防には、今回ご紹介したセルフケアが欠かせませんが、歯ブラシやフロスを当てにくい箇所は、どうしてもプラークが残りがちです。
口臭をなくし、歯肉炎や歯周病などの口内トラブルを未然に防ぐには、セルフケアに加えて3ヶ月に1度、歯科検診を受けて歯茎の状態をチェックし、プロの歯科衛生士に歯の隅々までクリーニングしてもらうのがベストです。
「若い頃から歯科検診に通っている方は、間違いなく歯がキレイですし、口臭もないですね。虫歯もなければ歯周病になることもありません。検診は保険適用で数千円で済みますが、虫歯や歯周病になって歯が抜けてしまったりしたら治療費は高額になります。一生涯の歯科診療代を考えても、検診でお口のトラブルを未然に防いでいる方が断然メリットが高いと思います」(西川先生)
例えば、過去の虫歯治療で金属製の詰め物を入れた人も、接着しているセメントが7〜8年で抜けてきてしまい、口臭の原因になったりします。そうした箇所も、歯科検診を受けていれば悪化する前に治療することが可能です。
「口腔内が原因の口臭は、年齢も体質も関係ありません。若い頃から歯科検診とセルフケアで、つねに歯をきれいにしている人は、年をとっても歯茎がしっかり引き締まっていて口臭も全くないんです」(西川先生)
逆に歯周病で口臭がひどくなってしまった人も、きちんと治療し、機械的にプラークを取り除くようケアを続ければ、健康な歯茎に戻すことができるといいます。
つまり口臭対策のオーラルケアは、早く始めるほど吉。今日からしっかり実践していきましょう!
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